バスを降りた僕の故里 夏の草に覆われ
老いた父母迎えてくれた 庭に赤いほうずき
積る話のひだに わずかの酒がしみたのか
ひじを枕に老いた父は 軽いいびきをたててる
幼馴染みが訪ねて来て 昔の僕の部屋で
パズルみたいに 思い出の糸 たぐり寄せてはつなぐ
時の流れに任せて ずいぶん遠くに来たものだ
あの日抱いた熱い望みは 茂る夏草にまぎれて
明日の朝はバスに揺られて 故里を出て行く
父や母や愛する友を 捨てて行くのはなぜだろう
こんな別離を幾度もくり返すこの僕は
やはり淋しい時代の中でも親不孝なのだろう
やはり淋しい時代の中でも親不孝なのだろう