晚夏
あなたの忘れていった 麦わら帽子が
ゆりいすの上に むぞうさにおいてある
あなたはそこに座って タバコをふかして
窓の向こうの 夏のしぐさを見ていた
ふれあう愛の意味を 確める事もなく
二人の間を夏は かけてゆく
あなたの教えてくれた さようならの歌
窓辺によりそい 私はうたっています
あなたの残していった ぬくもりだけが
ベッドの陰で うつろにさまよっています
この部屋のテーブルの上に ティーカップがふたつ
あの日からずっと こうしておいてあります
真夏の海の色も 忘れかけた私に
きっと秋風は 冷たすぎるでしよう
あなたの麦わら帽子を そっとすてましよう
そして みじかい 私の夏が終ります